白井さんちの子育て事情

発達グレーな長男の家庭学習をメインに、我が家の子育て事情を晒します!

【感想】望み/雫井脩介【ネタバレあり】

こんにちは、白井です!!

実に半年ぶりくらいに本を読みました!

正確には、本はちまちま読んでいたけど最後までたどり着けずに力尽きる日々を送っていました。

読了できたのは久しぶり。

というわけで、ネタバレありの感想を思いつくままに書いていきます!

 

今回読んだのは雫井脩介さんの『望み』です。

映画化も決定しているそう。読み終わってから帯び見て気づきました。

あらすじ 

平穏に暮らしていた家族が、高校生の息子が行方不明になったことで少年犯罪の渦中へと引きずり込まれる。

息子が行方不明になったと時を同じくして、息子の友人が殺害される事件が起こる。

目撃情報から容疑者は少年2人。

しかし行方不明となっているのは息子含めて3人だという。

息子ははたして加害者なのか被害者なのか。

 

感想

父親と母親、両者の心理描写で物語が進んでいくこのお話。

最期まで息子が被害者なのか加害者なのかは分からないままで非常にヤキモキしながら読みました。

 

※ここからはネタバレを含みますので、結末が分かっても大丈夫!という人のみお願いします。

 

息子・規士が加害者であってほしいと願う母・貴代美と被害者であってほしいと願う父・一登の葛藤が丁寧に描かれているだけあって、読んでいる間ずっと気持ちがぐちゃぐちゃにかき乱されるような感じでした。

同じ親として、たとえ加害者であっても生きていてさえくれればいいという貴代美の気持ちは分からんでもない。

でも、犯罪者、ましては人ひとりを殺してしまっているのだからそんなきれいごとでは済まされないわけで。

高校受験を控えた娘がいるし、娘のことを考えたら一生殺人犯の妹として過ごさせるくらいなら、いっそのこと被害者であってほしい思う一登よりの気持ちで読み進めていた私は、いちいち貴代美の言葉にイライラしていました。

被害者遺族のことを考えたら、どうしても生きてさえいればやり直しができるなんて思えなくて……。

貴代美にイライラしたり、現実でもこういう事件でたびたび非難されるマスコミの非常識さとか、事件の真相も分からないうちから規士が凶悪な殺人者であるかのようなネットの書き込みにもイライラ。

そして、心理描写を丁寧に書くあまり物語が遅々として進まない感じにもイライラ。

あまりにもイライラするものだから、いっそのこと規士が加害者なのか被害者なのかはっきりさせてから読もうかとすら思ったくらいです。

なんとか我慢して読みましたが……。

 

終盤、規士の遺体が発見されるわけですが、私はここで愕然としました。

なぜなら、私はずっと一登よりの気持ちで物語を読み進めていたのですが、実はそうではなかったことに気が付いてしまったから。

自分がもし規士の親という立場であるなら、娘の将来のことや家族のこれからのことを考えたら被害者であってくれた方がいいと思って読んでいたわけですが、一登はずっと自分の息子は人を殺すような人間ではない。だからいっそのこと被害者であってほしい。そう思っていたんです。まぁこれはずっと一登の心理描写のなかに書かれていたことですが。

自分の息子を信じるか否か。この部分が私にはなかったんですよね。本当にびっくりしました。

貴代美が、規士の葬儀で「あの子は信じてほしかっただろうに、信じてあげられなかった」とこぼしたシーンではっとさせられました。

規士が生きていて加害者として逮捕されたという展開だったら、この部分には気づけなかったかもしれません。

が……これ、規士が生きていても死んでいても私としてはどうにも受け止めきれない展開だよなぁとも思いました。

やっぱり自分の子供には生きていてほしいし。でも被害者や被害者遺族のことを考えたら生きていてほしくないような……読み終わってもぐるぐると考えてしまいましたね。

そんなわけなので、読了後真っ先に出た感想は「吐きそう……」でした。

 

終始心穏やかに読むことはできなかったのですが、イライラのピークは殺された少年・与志彦の通夜(だったか葬儀)に参列した一登が、与志彦の祖父と長年仕事上の付き合いがあり、一登とも仕事で付き合いのある高山社長が一登をぶん殴ったシーンです。

また規士が被害者か加害者かわかっていない状況で、それでも息子は犯人じゃないと信じ息子の代わりに焼香をあげさせてほしいという一登に、規士が犯人だと決めつけその親が何のこのこ焼香上げに来てんだと怒り心頭な高山社長。

社長の気持ちは分からんでもないけど、正直「お前は部外者だろーが!すっこんでろジジイ!!」という気持ちでいっぱいでした。

被害者である与志彦の祖父が殴りつけるってなら話は分かるんですけどね。高山社長は関係ないじゃんって。

しかもその直後に規士の遺体が発見されてしまうわけで、高山社長は規士の葬儀で一登に土下座せんばかりの勢いで謝罪をしているのですが、私が一登ならぶん殴って罵声を浴びせてるかもしれないな、と思いました。

葬儀の参列すら拒否するかもしれない。だって一度は犯人だと決めつけた人間なわけですし。

でもそれを言ってしまうと、貴代美もずっと息子が犯人であってほしいと願っていたわけで……でも貴代美に対してはもうイライラはしてなくて、むしろ規士の遺体に縋り付いて泣くシーンでは一緒になってボロボロ泣いてしまったほど。

やっぱりこの物語、後味最高に悪いなぁ……。

それだけ巧みな心理描写でした。

これ、映画化したら観れる気がしないです。

キャストにもよるけど……結末知ってても同じようにイライラしたり泣いたりしてしまいそう。