白井さんちの子育て事情

発達グレーな長男の家庭学習をメインに、我が家の子育て事情を晒します!

【感想】クジラは歌をうたう/持地佑季子【ネタバレあり】

おはようございます、白井です!

一冊、心を揺さぶる本を読むと、立て続けにもう一冊、もう一冊と読みたくなります。

『望み』の次に手に取ったのは、180度雰囲気の違う『クジラは歌をうたう』という作品。

 青空エール』『くちびるに歌を』『青夏』などの映画を手掛ける人気脚本家・持地佑季子さんの作品です。

あらすじ

30歳になり結婚を控えた拓海は、高校の同級生だった睦月のブログが12年ぶりに更新されていることに気が付いた。

『君は今、何を見て、何を思っていますか?』

決して更新されるはずのないブログが更新されたことで、高校時代の記憶が鮮やかによみがる拓海。

ブログを更新したのは誰なのか。

30歳と18歳。東京と沖縄――時間と場所を超えて綴られる物語。

 

感想

※今回はあまりネタバレはないかもしれないけど、一応ネタバレ注意でお願いします。

 

30歳の現在と18歳の過去とを交互に描いているのですが、その辺は脚本家らしい構成だなぁという感じ。

正直こういう構成はあまり好きではなく、案の定中盤まで読み進めるのは苦痛でした。

なぜなら、全然話が進まないから!!

過去パートなんて主人公の回想なので物語としては重要なシーンがあるかもしれないけど、”更新されるはずのないブログが更新された謎”は一向に解けないのでもどかしいんですよね。

それでも過去パートはザ・青春☆って感じの甘酸っぱい出来事満載で、自分も中学や高校時代を思い出しながら楽しく読みました。

 

読んでいる間中ずっと海の音や波のがしているような感じがして、海のそばで育ったわけでもないのに妙に懐かしく思ったりもしました。

ブーゲンビリアの匂いがしてきそうな、不思議な感じ。

文字だけでこういうのを読者に感じさせるのってすごいですよね。

 

ただ、残念なことに主人公と感情を重ねることができませんでした。

これは私が女性だからなのか……その辺はよく分からないけど、現在パートでの拓海の言動がなんだかモヤモヤ。

結婚を直前に控えているというのに、過去の、しかも死んでしまった女性をずっと考えて過ごしているので、結婚相手が可哀そうになってしまいました。

実際、途中から結婚相手である梢は拓海と会うことを拒絶してしまい、破断直前のような感じになっていましたからね。

リアルならこれ男性側がめっちゃ叩かれるやつじゃない?とか思いながら読みました。

 

ラストはまぁハッピーエンドだったので良かった。

これで破断とかになって拓海が過去にとらわれて生きるとかだとなんだか梢が可哀そうで……。

過去に囚われて生きるって決めたならそれはそれで拓海は幸せなんだろうけど、周りの人間は?って感じですもんね。

きちんと過去と決別、というかけじめというか、区切りをつけて、睦月の死を思い出として受け入れられたのは良かったなと思います。

 

そして肝心のブログ更新の謎ですが……これはまったく盲点でした!

自分だってブログやってるしその機能使ってるじゃん!!ってね。

”ブログ主が死んでいる”という前提があるせいで”ブログは更新されるはずがない”とか”更新した犯人がいるはず”という風に考えてしまうのは不思議ですね。

よくよく考えたら何にも不思議なことなんてないんですよね。

この謎の答えはとてもすっきりとしていて最高でした!!

終わり良ければ総て良しではないですけど、途中何度か読むのやめようと思った作品ではありましたが(あまりにも単調すぎるから……)この謎の答えのおかげで「面白かった!」と思えました。

これ、普通に謎のままとかだったら余計モヤモヤして作品自体を嫌いになっていたかもしれない。

変にしんみりさせないで、現実味があってとてもよかったです。

 

このまま映像化できてしまうくらい作りこまれているので、いつか映像化されることを期待しています。